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話題の先生にインタビュー

小松晃之先生(理工学部)

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重要な役割を担うタンパク質
その多彩な働きを生かした新しいバイオマテリアルを開発

中央大学で教鞭をとられている先生の中から、注目を集めている分野、ユニークな研究活動を行っている方にインタビューします。今回は、人工血液やナノチューブに関する研究が注目を集めている小松晃之先生にお話を伺いました。

(取材・文責 学員時報)

小松晃之(こまつ・てるゆき)先生

小松晃之先生 中央大学理工学部応用化学科教授。専門は生物無機化学、生体高分子化学、超分子化学。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。同大学院理工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了。同大学理工学術院総合研究所准教授、兼慶応大学医学部訪問准教授などを経て、平成22 年(2010 年)より現職。

多くのメリットを持つ人工血液「ヘモアクト」

--先生の研究内容について教えてください。

小松
 私の研究は、「タンパク質でバイオマテリアルを作る化学」です。人体において多彩な働きをするタンパク質を原料にして、健康や医療、環境などに役立つ新材料の開発を進めています。
 その一つが人工血液「ヘモアクト」で、血中のタンパク質であるヘモグロビンとアルブミンを結合させ、酸素運搬体として製剤化したものです。この人工血液の大きなメリットは保存期間の長さ。献血で集められた血液は3週間しかもたず、常に新しい血液が必要とされますが、1年でも2年でも保存可能なヘモアクトは、血液の安定供給に役立つのです。また、血液型を選ばず誰にでも投与できるのもメリット です。
 現在、人工血液の必要性は非常に高まっています。少子高齢化が進行する我が国では、血液を提供できる若いドナーが減る一方で、手術や病気治療で輸血液を使う高齢患者が増えるため、血液はどんどん不足していきます。日本赤十字社の推計によると、今から12年後には年間で100万人分の血液が不足するとのこと。人工血液は、迫りくる危機への解決策として注目されています。

--なぜ保存期間が長く、血液型を選ばず投与できるのでしょうか。

小松
 血液の中で酸素を運んでいるのは、ヘモグロビンを“袋詰め”にした赤血球です。この袋の部分が3週間すると少しずつ壊れてきて、血液は使えなくなります。しかしヘモグロビン自体は、酸素を運ぶ機能を失うわけではありません。そこで我々はヘモグロビンを取り出して、新しい酸素運搬体を作ろうと考えたのです。
 ヘモグロビンだけでは体内で機能しないので、同じく血液中に含まれるアルブミンというタンパク質と結合させました。これが人工血液「ヘモアクト」です。人工血液の保存期間が長いのは、それ自身が安定した構造である上、赤血球のように“袋が破ける”ことがないからです。
 また、私たちの血液型を決めている物質も赤血球の袋の部分にあります。人工血液にはそれがないため、血液型は存在しません。

--ヘモグロビンとアルブミンとの結合が、世界初の試みだったのですね。

小松
 人工血液は、これまでヘモグロビンだけをつなげたり加工したりする方法で研究や開発が進められてきましたが、安全性や有効性が確立せず、実用化には至っていません。
 我々の発想は、それまで誰も考えつかなかったアルブミンで、ヘモグロビンをくるむというもの。実際に、血液中からヘモグロビンとアルブミンを取り出して試薬で結合してみたところ、いとも簡単に思い描いていた物質ができました。アルブミンも血液中にあるタンパク質なので、体はこの結合物質をアルブミンと認識し、血液の中に戻しても副作用は起きません。それも我々の人工血液のメリットとして挙げられます。

様々な分野へと広がるバイオマテリアルの研究

--人工血液の研究開発を始めたのは、いつ頃からでしょうか。

小松
 早稲田理工時代の恩師が、日本における人工血液研究のパイオニアで、私もその研究に永年携わっていました。しかし実用化への道のりは遠く、中大で自分の研究室を持ったときには、「人工血液はもうやめよう」「タンパク質を使った他の研究をしよう」と考え始めていました。
 しかし実際には人工血液の思想が染みついていて、常に「もしこの物質ができれば人工血液が完成するかもしれない」と思ってしまい、結局やめられなかったのです。それがアルブミンを使うという発想につながりました。

--人工血液への注目が高まってきているようですね。

小松
 医学系の先生からサンプル提供を頼まれたり、応用研究に誘われたりしています。現在は実用化を目指して、他大学の医学部や薬学部、製薬会社などと共に開発を進めているところです。
 また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とも共同研究を行っています。国際宇宙ステーションの船室でヘアモクトのX線結晶構造解析のための結晶を作るプロジェクトを進めています。無重力の宇宙空間では地上よりもきれいな結晶ができるので、人工血液の可能性がさらに広がるかもしれません。

--人工血液の他にも研究開発を進めているものはありますか。

小松
 タンパク質の層を持つ筒状の物質「ナノチューブ」を作っています。ナノチューブには、大腸菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、抗がん剤などを取り込む機能が付加できますし、穴の大きさや内層の構成によって、取り込める物質を変えられます。
 我々はナノチューブを血液中のウイルス除去、がん治療、食品や水などの除菌に役立てたいと考えています。ナノチューブは粉末状にすることができて、しかも微量、短時間で効果を発揮するのが大きな特徴。今後は雨水浄化などの用途への応用も期待されています。

中大生は素直で一生懸命

--人工血液の研究開発を始めたのは、いつ頃からでしょうか。

小松
 私が学生を見ていて思うのは、何かの役に立つ、応用ができるなど、結果が見える研究に、やりがいを感じているということ。自分の研究を「こんなことをやっています」と、目を輝かせながら説明する様子は、とても生き生きとしています。自分自身が楽しいのはもちろん、研究成果が新聞記事やテレビ番組で取り上げられて、家族や友だちにも見せることができたり、「すごい」と褒められるのも嬉しいようです。それがさらにやる気を高めて、良いほうへと進んでいくのでしょう。
 中大生は素直なので、「目指す」「実現させる」という方向性で指導すれば、何事にも一生懸命に取り組み、上手にこなします。他の大学と全く変わらないポテンシャルを持っていると、私は思っています。

2015年(平成27年)3月25日

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