柴田 英樹ゼミ
Hideki Shibata seminar

演習テーマ『経済史と人類の自然史』

人間の歴史の始まりは、人間の自由にあります。人間が自然から自然本能を奪われ、自然から追放された存在となり、自然と闘争して衣食住を満たす必要が生じた時点から、人間独自の歴史が始まります。人間の文明・文化がどれほど発達しようと、人間は労働しなければ食べることはできず、生きていくことはできません。自由になった人間は、自然必然的な存在ではなく、偶然的・反自然的な存在になります。マルクスが物質生活の生産を、人間社会形成の土台だといったのも、自然と戦いながら生きていく行為が、人間社会の根底だというためでした。フランスの哲学者サルトルはこのような人間は「自由の刑に処せられている」と言い、マルクスは人間のことを「受苦的存在」と呼んでいます。

自由といっても人間は、現実世界で好き勝手できるわけではなく、あくまで視点の自由であり、身体という自然的で物質的な存在を中心とした人間の生活そのものが、また自然である以上、自然と人間との根源的矛盾が、人間社会においては、富の配分の問題や階級闘争など、自然としての人間同士の対立矛盾として現象することもまた当然です。現在の資本主義社会では貨幣が富の中心になっていますが、古代・中世の社会では奴隷・土地・家畜など貨幣以外のものが富の中心になっていました。そして、この富概念の相違がそれぞれの社会を全く異なるシステムへと形成してきました。

人間と自然との闘争の歴史は、他方で人間による自然克服の歴史でもあります。新石器革命によって、人類は安定した食料の生産を可能とする生産経済へと移行し、産業革命によって肉体労働の自然的限界を大幅に越え、情報革命によって今度は精神労働に課されている自然的な制限を大幅に越え、今また「エネルギー革命」によってエネルギー供給に課された自然的制限を人類が大幅に越える可能性があります。アメリカを中心としたシェール革命によって天然ガスや石油の埋蔵量が飛躍的に増大し、またスマートグリッドや新型電池の開発や水素の利用によって再生可能エネルギーの活用が本格化しつつあります。

ゼミの参加者のみなさんには、現代にいたるまでの人類史をとらえる視角を、経済史およびそれに関連する文献を研究しながら会得し、目の前で起こっていることの真相、人類史上の意義を解明できるような力をつけていってもらいたいと思います。

ゼミ形式

演習は主として輪読形式でテキストを読むことを中心に始め、3年生の後期からは各自の研究テーマに従った報告を中心とした演習になります。
自分のテーマを決めるのがなかなかたいへんなところですが、3年前期までの演習や経済学部の様々な講義、各自の読書や研究などによって徐々に考えがまとまっていくものです。もちろん担当教員が必要に応じてお手伝いします。先輩のゼミ生もみなさんこの経路をたどって各自の独自の研究を進め、卒論を書いていますから、そうしたものを参考にしていただくこともできます。

ゼミ合宿を行うかどうかは演習参加者との相談で決めます。必ず行うと決めているものではありませんし、どのような形態で行うかも参加者との相談しだいです。

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