中央大学 中央大学Webサイト
掲載バックナンバーはこちら

イキイキと活躍する学生・学員をご紹介 進取果敢

Terukazu Kato
加藤 照和 氏(株式会社ツムラ 代表取締役社長)昭61商

学員時報オンライントップ > ピックアップコンテンツ > イキイキと活躍する学生・学員をご紹介 進取果敢

受け継いだ理念を守り、強みを生かして世の“一隅を照らす”

2018年(平成30年)9月20日


加藤 照和 氏   株式会社ツムラ 代表取締役社長 昭61商

1893年(明治26年)創業のツムラは今年で125年目を迎えた、漢方・生薬事業における国内トップ企業である。加藤照和氏は48歳で同社の代表取締役社長に就任。「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」という企業使命を果たすべく、従業員数3,400名(2018年3月現在)を超えるツムラグループのリーダーとして、組織を牽引している。同氏に、漢方薬や経営理念、母校への思いなどについてお話をうかがった。聞き手は学員会の髙嶋民雄事務総長。










<プロフィール>
加藤 照和(かとう・てるかず)氏
1963年(昭和38年)生まれ。株式会社ツムラ代表取締役社長。1986年(昭和61年)、本学商学部経営学科卒。津村順天堂(現ツムラ)に入社後、TSUMURA USA, INC. 社長、取締役執行役員コーポレート・コミュニケーション室長などを歴任し、2012年(平成24年)から現職。

漢方医学と西洋医学の両方の特質を生かした医療提供に貢献

――商学部経営学科ご出身ですね。

加藤 1年生のときは簿記など会計を、2年から4年までの3年間はゼミを含めてマーケティングを勉強しました。

――当時から将来は経営者にと考えておられたのですか。

加藤 いえいえ、まったく思っていませんでした。会計科目は自分には合わないと思い、勉強をマーケティング系中心に切り替えたのですが、入社後に最初に配属されたのが経理部門。営業・マーケティング志望だったので少しがっかりしました(笑)。

――その後、どのような過程を経て社長になられたのですか。

加藤 経理部門を経て、子会社を整理・統合する新設部署に異動し、米国の大きな会社を清算するプロジェクトに携わりました。終了後、新たに米国内でマーケティング会社を設立する計画が持ち上がり、課長職のままその会社の社長を務めることになりました。帰国後、広報部長、取締役執行役員コーポレート・コミュニケーション室長を経て、2012 年(平成24年)に現職に就きました。

――「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」という企業使命を掲げられています。

加藤 江戸時代は現在の西洋医学に近い蘭方医と、日本の伝統医学である漢方医が共存していましたが、明治になると西洋医学の試験に合格した者だけに医師免許が与えられることになり、1895年(明治28年)に帝国議会により漢方医を医師として認めない決議がなされました。いわば漢方はいったん排斥されたわけですが、当社の創業者とその後を継いだ二代目社長は、「漢方の復権」を信じ事業を続けました。その後、1976年(昭和51年)に当社の医療用漢方製剤が国の薬価基準に収載・保険適用され、「漢方の復権」を成し遂げたのです。
 このような経緯で現在に至っているのですが、良い面もあります。中国では伝統医療を行う中医と西洋医という2つのライセンスがあり、兼務する先生は多くありません。日本は西洋医のライセンスで漢方も扱えるため、患者さんの状態を見ながら西洋医学、漢方医学それぞれの特質を生かした、治療の幅が広がる医療体系となっています。「漢方医学と西洋医学の融合」というのはそうした意味で、他の国にはない制度のもとで、世界最高の医療の提供に貢献したいと考えています。

自然由来の漢方薬の精度を高める科学的な技術と研究

――漢方というと、いわゆる西洋薬と違って副作用が少ないイメージです。

加藤 医薬品は身体に働きかけるものなので、効果があるということは必ず反作用があり、副作用があります。しかし、例えば葛根湯には葛切りの葛の根や生姜などの生薬が配合されているように、漢方薬はもともと食材などが原料となっている「薬食同源」のケースが多いのです。

――漢方を広めるために、どのような課題があるのでしょうか。

加藤 漢方薬は多成分であるため、単一成分の西洋薬のように、身体のどこにどの成分が効いたということを証明するのが非常に難しいという面があります。しかし患者さんに安全・有効に使っていただくためには、特に主要成分については、作用メカニズムを科学的に証明していかなければなりません。会社の経営理念である「自然と健康を科学する」は、そのことを指しています。
 また、作用メカニズムや有効性・安全性を示す臨床研究、エビデンスの構築を図る取り組みとともに、我々が長年取り組んでいるのが、自然由来である漢方薬の成分の均質化・均一化です。医薬品である以上、成分にバラツキがあってはいけません。自然由来の成分を狭い一定の範囲内に収める、長年かけて培った生産技術が会社の強みでもありますし、今後もその精度を高めていきたいと考えています。

社会の課題解決につながる新設の健康スポーツ科学部に期待

――2020年には本学に健康スポーツ科学部(仮称)が新設される予定です。健康を維持するために大切なことは何でしょうか。

加藤 加齢とともに運動機能や認知機能などが低下し、要介護に近づいている状態を指す「フレイル」という医学用語が最近よく使われます。筋力、視力、記憶力など身体能力が低下していくのは仕方がありませんが、フレイルの状態からいかに進行させないか、あるいは回復させるかで、健康寿命が大きく変わってきます。漢方にも体力を回復させる、体を元気にする「補剤」(ほざい)という概念の漢方薬があり、これは新薬にはなかなかない発想で、そうした薬の需要が近年伸びています。一定の筋力、機能を維持するということではもちろん運動も大事です。若い人には若い人のための運動や健康へのアプローチがあり、高齢の方には高齢者向けの考え方があります。そのあたりも幅広くカバーする特色ある学部になれば、社会課題の解決につながる人材がたくさん輩出される、素晴らしい学部になると思います。大いに期待しています。

――本学がこれからさらに発展していくために、何かご提言をいただければ。

加藤 そんな偉そうなことは言えませんが(笑)。私の座右の銘の一つに、「一隅を照らす」という言葉があります。我々は漢方の世界でできる限りのことをして、自分たちの役割を果たすことで、世の中、日本の社会に貢献できればと考えています。あれもこれもではなく、自分たちにできることを極めていくという姿勢です。中央大学の建学の精神は、「實地應用ノ素ヲ養フ」です。これまでも錚々たる企業経営者の方々を数多く輩出されています。その背景には中央大学での学びがあったはずです。建学の精神に基づき大学の特色を磨いていけば、中央大学で学びたいと思う人がさらに増えてくるのではないでしょうか。

――中央大学は中央大学としての「一隅を照らす」部分があるはずで、そういう強みを磨いていくべきだというご指摘ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

▲TOP