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話題の先生にインタビュー

佐藤 博樹 先生(中央大学大学院経営戦略研究科教授)

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ビジネススクールが輩出するのは
企業の事業構造変化に対応する人材

2017年(平成29年)9月13日


 企業と社会が求める戦略思考と戦略実践のできる「戦略経営リーダー」の育成を目的としている中央大学ビジネススクール(CBS)。カリキュラムや教授陣の評価が高い一方で、どのようなものであるべきか。人気教授の一人、佐藤博樹先生に伺った。

佐藤 博樹(さとう・ひろき)先生

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<プロフィール>
中央大学大学院経営戦略研究科(ビジネススクール)教授、東京大学名誉教授。専門は人的資源管理、人材サービス業、ダイバーシティ経営など。1981年(昭和56年)、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得。

「社会人を教えるのはおもしろい。議論ができるし、こちらも学ぶことが多い。勉強がしたくて自分で学費を払ってやってくる分、要求度も高いが、こちらとしてもやりがいがありますよ」と語る佐藤先生 

企業は社員が学べる環境づくりを

――佐藤先生の授業はとても人気が高いと伺っています。

 そんなことはないですよ。専門は人的資源管理です。「ワーク・ライフ・バランス&多様性研究プロジェクト」で企業と共同研究をしています。内容は、基礎研究というよりは応用研究です。参加企業は31社で、“女性活躍”や“働き方改革”などに関して、最近は転勤問題や仕事と介護の両立支援などを取り上げ、企業のダイバーシティ推進担当者や人事担当者の皆さんと共同研究をしています。
 これまで、私は大学の学部や研究者養成の大学院でも教えてきました。CBSでは社会人学生を教えていますが、研究者養成の大学院と比較しても、ビジネススクールで教えるのはおもしろいです。実務を担っている社会人学生と議論ができるため、こちらも学ぶことが多いのです。学部生は、必ずしも自分が勉強したいからという人ばかりではないですが、その点、ビジネススクールには皆さん自分から積極的に勉強がしたくて、自分で学費を負担して入学したくる方が多いこともあります。もちろんその分、要求度も高いので大変ですが、こちらとしても教えることにやりがいがありますね。

――ビジネススクールとはどうあるべきですか?

 専門が人的資源管理のため、企業の人事の方からよく「MBAは仕事の役に立ちますか?」と聞かれます。ですが、大事なのは5年後、10年後も会社から期待され仕事を続けていける社員になれるか、そのために役立つ知識を学べるかが大事です。今すぐ必要な知識を学ぶだけなら専門学校でもいいわけですから。
 たとえば大学の法学部を卒業したとしても、日本の企業では入社後に、経理や営業に配属されたりします。そこでどうやって仕事に必要なスキルを身につけるかというと、基本的にはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。実務を通じて、上司や先輩に仕事を教えてもらうわけです。しかし今後は、OJTで身につけたスキルだけでは不十分な時代になります。なぜなら企業は存続のために事業構造を変えていきますから、仕事も変わってきます。すると当然、仕事を担う社員に求められる職務遂行能力も変わってくるわけです。
 ずっと同じ仕事をしているならば、OJTでもいい。しかしOJTで獲得したスキルは、応用力がない。今までと異なる仕事にも応用していく能力とするためには、OJTで身につけたスキルを、棚卸し、理論的に整理することが必要です。ビジネススクールで学ぶ意味がここにあり、そのことを通じて5年後、10年後も第一線で活躍できる能力を獲得できるわけです。

――企業がビジネススクールで学んだ社員を活用するにはどうすべきでしょうか?

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 ビジネススクールで学ぶことが会社側にまだまだ正しく理解されていないようです。「すぐに役立たなければ意味がない」とか、「夕方からビジネススクールに行くだけのゆとりを残して会社で仕事をしているのではないか」なんて言う人もいる。「評価がマイナスになるのでは」と危惧して、会社や上司に言わずに入学してくる人もいます。MBA取得後に会社を転職する場合には、それまでの勤務先が、ビジネススクールで学んだことを正しく評価していないことが背後にあることも少なくないです。
 これは、日本の企業にとって非常に大きな損失。こんな状況では国際競争にも負けてしまいますよね。今の仕事に必要なスキルだけではなく、5年後、10年後も役立つスキルを学んだ社員がたくさんいるということが、企業の競争力を高めることにつながることをぜひ理解していただきたいと思います。
 学費についても、私は、必ずしも会社がお金を出す必要はないと思っています。実際、自費で通っている方も多いです。今は、国の教育訓練給付金制度で最大96万円が出ますし、必要経費の控除も、CBSには給付型の奨学金もあります。そういうことを知らない場合も多いので、うまく活用すればいいのではないでしょうか。
 会社として大切なのは、学費を出すことではありません。多くの社員がビジネススクールで学べるような環境にしてあげることです。それにはまず、勉強している社員をほめてあげる。そして、働き方改革を通じて、勉強する時間を確保してあげる。この2つが重要です。

あなたに合ったMBAを選びなさい

――ビジネススクールに進もうという人へのメッセージは?

 ビジネススクールの教員の条件として重要なのは、研究業績があること、そして実務家と対話ができることの2つです。理論的な知識を学ぶわけですから、研究をしていなければいけませんが、それだけでもだめです。この2つをきちんとやられている教員がいるビジネススクールがいいのではないでしょうか。
 学部と同じように偏差値のランキングがあると誤解している人や、学歴ロンダリングやリベンジ受験なんて人がまだ少数はいるようですが、大切なのは自分が何を勉強したいか、どの教員から学びたいかです。それがわかれば、おのずとどのビジネススクールに行けばいいかが決まるでしょう。

――他の社会人向け大学院とCBSの違いや魅力は?

 ビジネススクールの側もそのことはしっかり認識する必要があります。CBSは、2年以上の実務経験が受験の条件で、学部を卒業してそのまま進学する学生をとっていない。それはビジネススクールとは何のためにあるかをわかっているからです。実務経験がないと、それをベースにした議論ができない。「CBSに来てくれ」ではなく「あなたに合ったMBAを選びなさい」と呼びかける。その方が、CBSの良さが伝わるのではないかと思いっています。
 他の社会人向け大学院では、教員が学部と兼任など片手間のところもあります。それに比べてCBSは専任制で内容も充実しています。それは大学としては経営的には大変ですし、文科省の私学助成で考慮が必要と思うこともあります。
 いずれにせよ、ビジネススクールで学びたいと考える社会人を日本社会全体として、如何にして増やすかということが大事だと思います。これができないと日本企業の国際的な競争力は危ういと考えています。

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