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イキイキと活躍する学生・学員をご紹介 進取果敢

杉本ゆかりさん

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CBSでの学びを生かし、
医師と患者とのコミュニケーションの重要性を伝えていきたい

2017年(平成29年)●月■日


杉本ゆかり さん

 企業の秘書、医療系専門学校の専任教員、校長職を経て、コミュニケーションや人材育成をテーマにした講演や講義で活躍する杉本ゆかりさん。2013年(平成25年)にMBAプログラム(専門職学位課程)を修了し、鈴木敏文賞と優秀論文賞を受賞。現在は仕事をこなしながら、DBAプログラム(博士後期課程)に進み、多忙な日々を過ごしている。そんな杉本さんに、CBSでの学びや、今後の展望をうかがった。





<プロフィール>
経営修士(MBA)。中央大学専門職大学院戦略経営研究科修了(2013年)。現代医療問題研究所所長、オフィスルーチェ代表。群馬大学大学院非常勤講師。中央大学ビジネススクール戦略経営アカデミー講師。NPO法人群馬がんアカデミー副理事長、NPO法人バイオフォーラム理事。中央大学南甲倶楽部会員。

CBSで学んだ理論と実証に基づき、患者満足度の研究をすすめる

――さまざまにご活躍されていますが、どういったお仕事を?

 企業向けの講座や研修会の講師などを行っています。ベースはコミュニケーション論ですね。MBA取得後は、マーケティングやマネジメント、人材育成に関するテーマも増えました。講演先は医師会や大学病院、一般病院などの医療機関、製薬会社。あと、JAです。
 教育活動では、群馬大学大学院博士課程の非常勤講師をしています。こちらでは、アントレプレナーシップ論(マーケティング論、経営戦略論)と、研究リーダー論(コーチング論、ファシリテーション論)の講座を一部担当しています。
 中央大学では、年2回ですが、CBSの戦略経営アカデミーで一般の方向けの講座を持たせていただいています。私自身、博士課程の学生でもありますから、学生をしつつ、仕事をさせていただくという感じですね。

――もともとは企業の秘書をされていたとか。

 メーカーの代表取締役秘書をしていました。その後、医療系国家資格を取得する専門学校の専任教員になりました。そのきっかけというのは、秘書時代、周囲の方々を見ていて、「もう少し言葉がけや態度、相手への思いを表現できたら、もっとよりよく生きていけるのに」思うことが多かった。すごくいい素質を持っているのに、と。僭越ながら年齢に関係なく、そういう方が多いと感じていました。それを1人ひとりに言おうとしても、なかなか伝えきれないですよね。でも教員ならば、授業で伝えることで多くの人に広がっていきます。たまたま専任教員の公募があり、転職を決意しました。

――なぜビジネススクールで学ぼうと思われたのでしょうか?

 専門学校で校長職に就いていたとき、某医師会で患者とのコミュニケーションについて講演する機会がありました。100人を超える医師が講座を受けてくれました。日本では2005年(平成17年)にOSCE(オスキー:臨床能力の実技試験)が実施されるなど、医師と患者のコミュニケーションがより重要になってきていました。
 その講演で、私の座長だった某病院の医長が「コミュニケーションが大事なことはわかるが、そんなことを医者がやっている時間はない。患者との細かいコミュニケーションは、看護師や事務員がやればいいんだ」とコメントしたのです。コミュニケーションをとることは、医師の仕事ではないと思っていたのでしょう。あわてて医師会長や病院長が「もうそういう時代ではない。患者とのコミュニケーションを通じて、患者を理解する必要がある」と謝ってくださいました。ですが、そのような考えの医師はいるのだ


 ▲ 卒業式
ろうな、と本音を感じる出来事でした。
 では、患者が抱える問題をコミュニケーションによって引き出し、患者を理解することの重要性を、どうしたらわかってもらえるのだろうか。医師を説得するためには、理論とエビデンスを示す必要があると考えました。それらを学ぶために大学院に進学しようと決意したのです。

――それでMBAを取得しようと思われたのですね。

 そうです。医師の多くは医学博士を取得しています。学位を持っているだけでは説得力がない。極端に言うと、それだけでは信頼につながらないのです。
 しかしマーケティングや戦略など、ビジネスの視点で患者満足やコミュニケーションを捉えることは、ある意味、医師が踏み込んでいない分野です。MBAを取得すれば、信頼性が高まり、医師も納得してくれるのではないかと考えました。

――理論やエビデンスとは、たとえばどういったものですか?

 患者満足度とは、病院や医師などの医療職に対する患者の主観的な評価であり、医療経営のために必要であると言われていました。しかし最近では、患者満足度が上がると、患者の行動をポジティブに変えることができることが理論的にわかってきたのです。
 たとえば、予約してもキャンセルしがちな患者が、約束をきちんと守り来院し、定期的に受診するようになる。医師の指示を守らず、処方された薬を毎回飲まなかった患者が、医師の指示を守り、薬を飲むようになる。リハビリに来なくなった患者が、きちんと取り組むようになる。その結果、治療効果があがる、といったことです。
 つまり、患者満足度を上げるということは、医療経営のためだけでなく、患者にとっても有意義あるということが、研究でわかってきているのです。このように、MBAで学んだ理論や研究結果を使って、患者のよりよい治療結果を導き、よりよい医療経営を可能とするために、さらなる研究や講演活動が必要だと思っています。

仲間と励まし合い、自分の限界を超える

――CBSを選んだ理由は?

 3つのポイントあります。1つ目に、カリキュラムです。CBSの戦略経営研究科では、経営戦略、ファイナンス、人的資源管理、経営法務、そしてマーケティングの5分野がバランスよく開講され、実務とアカデミックの両面を兼ね備えています。各分野で有名な教授陣がそろっています。私自身は、いままでの仕事を振り返り、自分に欠けているなと思うところを中心に学びたいという思いがありました。その点、CBSは自分の専門領域を決めながらも、ほかの領域の教科をとることができます。
 実際に、私はマーケティングを専攻していましたが、半分は人的資源管理の授業をとっていました。“おいしいとこ取り”です。
 2つ目に、CBSの事務の方がとても熱心で温かい対応をしてくださったということがあります。ビジネススクールを受験しようと決めたとき、5校くらい選んで、一つひとつに電話をしたのです。たまたまかもしれませんが、他校は対応が横柄で冷たくて(笑)。自分の職場は学校だったので、事務の対応は気になりました。それに、仕事をしながら学校に通うというだけでも、「大丈夫かな」「自分にできるだろうか」と不安なのに、事務の方が冷たいと、学校の姿勢として心配になります。そんな中、CBSは本当に親切で、ここだったら何か困ったことがあってもフォローしてくださるのではないかと思ったのです。
 最後は、ロケーションのよさです。後楽園キャンパスの周りは、都心ながらも近くが住宅地のためか静かです。後楽園駅、春日駅、水道橋駅が近く、便利なところです。あと、CBSのある3号館の14階から眺める景色は素敵です。夜の東京ドームを見下ろしながら勉強するのは、なかなかなものです。でも、東京ドームで野球の試合やコンサートがあった時、授業の帰りと終了時間が重なると大変なことになります。

――仕事と勉強の両立は、大変な日々だったと思います

 CBSに入ったとき、ある教授から言われたセリフが印象的でした。「ここに来るのは、知識を増やすためだけではなく、自分の限界を超えること。キャパシティを増やすためだ」と。確かに、知識を得るのは学校に入らなくてもできますからね。通っている中でそのとおりだな、と痛感しました。
 人間は大人になると、自分の限界を自分で決めてしまいがちです。「このくらいならできるだろう」とか、「このくらいまでしかできないだろう」とか。しかし、自分の限界を超えないといけないし、超えないとやれない。だから、時間の使い方を工夫して、達成するにはどうしたらいいかを考えながら動いていました。
 私はゴルフが趣味なのですが、その時間が削られてしまうのは嫌でした。心とカラダのバランスをとるためにも、遊ぶときはきちんと遊び、切り替えて学ぶ。効率的な時間の使い方は先輩たちから学びました。自分は教員でありながら学び方を学んだ、という感じでしょうか。こういったことはCBSで代々受け継がれてきたことなのだろうなと思います。

――どうやってモチベーションを保てたのでしょうか?

 私は、平日CBSに通う時は、1日260kmほど車で移動していました。自宅は埼玉で、朝、勤務先の群馬の学校に行き、夜には後楽園のCBSで授業を受ける。11時頃終了して、埼玉の自宅に12時近くに帰って食事をしてから、夜中に勉強をする。そうすると、削れるのは睡眠時間しかありません。
 夜中の3時頃に「眠い、辛い」と思いながらレポートを書いていると、CBSの仲間からSNSで「がんばってる?」とメッセージが入るんです。あー、みんながんばってるんだな。辛いのは私だけじゃないんだな、と踏ん張れる。私はCBSランナーズでリレーマラソンに出ていますが、一緒ですね。自分ひとりではないから、頑張れるし、やめるわけにはいかない。よし! 私もがんばろう。そんな思いで2年間を走り続けました。

――CBSで学んだことは、いまの仕事のどんなところに生きていますか。


 ▲ 病院での講演会

 私は教えることが仕事ですが、受けた授業はもれなく活かされています。同じコミュニケーションの講義でも、MBA取得後は違った視点から話せるようになりました。
 ネットワークが広がったことも大きいです。授業や講演で企業での事例を話しますが、友人からのリアルな情報は効果的です。自分の講義の信ぴょう性が増すんですよね。リアルでタイムリーな情報によって聴講者や学生の理解度も上がります。
 実はお恥ずかしい話ですが、CBSに入った初日、張り切ってペンとノートを新調し、一番前に座って気合いをいれて授業を受けました。ところが、誰もペンとノートなんて持っていない(笑)。ノートパソコンを開いて、先生の言葉をすぐに打ち込み、SNSで先輩や周囲の方と情報交換しながら、ネットで調べ、先生に自分の意見を返す。まさに三次元中継状態です。自分の時代遅れを痛感し、すぐにAirMacとiPhoneを購入しました(笑)。
 SNSの活用方法も、スピード感がすごい。たとえばCBSの授業ではグループワークが多いのですが、皆忙しくて集まるのは難しいので、夜中にSNS上で議論します。また、1人ではわからない理論を、みんなで持ち寄って学びます。誰かがつくったパワーポイントに、ほかのデータを合算させて、即座にSNSにアップされている。しかも翌日には発表資料が完成している。まるでそこにいるかのようなオンタイムのやり取りが、私には衝撃的でした。私の時間はなんてゆっくりだったのだろう、いまの情報時代には、この圧倒的なスピード感が当たり前なのだ、と。いまでは当たり前ですが、そういったことも含めて、そのときたくさん学びましたね。

――そしていまは、DBA(博士後期課程)プログラムで学ばれています。

 私は医療や教育の仕事をしてきたため、まわりは博士の学位を持つ人が多く、DBAに進むことに違和感はありませんでした。何よりも、せっかく研究をはじめたのに、修士課程で終わるのはもったいないなと思いました。
 博士課程では、論文をジャーナルに発表する必要があります。これは、以前から私の目標の一つでした。博士課程に進んだお陰で、分析手法や論文の表現方法について、指導教授から細かく教えていただいています。
 でも、まだまだ未熟です。自分のできなさ加減にあきれたりします。時々、仲間と議論したり、発表を聞いてもらったりして、色々意見をもらいますが、MBAプログラムとは異なり、DBAプログラムでは自分で突き詰めていくしかない。自分との闘いです。
 私は、研究科長である中村教授のゼミにいるのですが、毎週、温かくご指導いただいています。中村教授は流通で大変有名な先生。マーケティングは全網羅なさっていて、実証研究にも精通しています。ご自身でも精力的に幅広く研究を行っていて勉強になります。指導もすごく繊細です。仕事柄、多くの教員を見てきましたが、尊敬できる指導者です。中村教授にご指導いただけて本当によかったです。

CBS生の魅力は“尖っていそうで、尖っていない”

――南甲倶楽部では、CBS支援委員会のメンバーでもありますね。

 そうです。MBAプログラム修了と同時に南甲倶楽部に入会しました。CBS支援委員会はCBSをよりよくしていくために、南甲倶楽部がどう支援したらいいのか協議する委員会です。私は、学生として支援される立場であり、南甲倶楽部として支援する立場でもあるわけです。教育者であり、元は学校経営に関わっていたので、いろいろな立場で考えます。
 複合的な立場にいて感じるのは、中大はネットワークがとても広く、強固であり、人間力の高い方が多いということ。CBSでは日ごろ聞けない業界の話を、バリバリと働いている方から聞くことができます。バリバリ仕事していて、アグレッシブで、切れ味は抜群。それで、この方は尖がっているのかしら? と一瞬思うのだけれど、とても温かい。“尖っていそうで、尖っていない”という感じの方が多いです(笑)。
 CBSは優秀な人材が多く集まっているので、学生がもっと外にアピールしてもよいと感じています。皆さん、多方面で活躍しているのに、ちょっと内向きなのかな。私を含め、学生1人ひとりがもっとCBSのよさを外に発信できればいいですね。


 ▲ メディケアの講演会

――CBSではさまざまな活動をされています。

 CBSクラブ(OB会)、メディケアプロジェクト、CBSランナーズという3つの活動に役員として参加しています。2014年には、中央大学野島記念Business Awardの決勝審査員を務めさせて頂きました。

――メディケアプロジェクト発足のきっかけ、経緯は何でしょうか。


 ▲ メディケアプロジェクトの勉強会

 CBSの在校生、修了生には、医師、薬剤師、検査技師、医療機関の管理者などの医療関係の方、製薬・医療機器メーカー、医療系コンサルティング会社に勤務している方など、さまざまな医療の専門職がいます。すばらしい贅沢な人材が集まっているのです。この人たちの力をそのままにしてはもったいないですよね。
 元々はCBSの田中洋教授のゼミにいる製薬会社の方々が世話人となり、情報交換会が始まりました。その後、メンバーが多くなり、講演会の実施、研究を目的としたプロジェクト・ユニットの発足など活動が広がって、いまに至っています。

――メディケアプロジェクトの活動によって、どんな成果が出てきていますか。


 ▲ メディケアプロジェクト勉強会後の打ち上げ!

 昨年度から、毎月1回各メンバーがコーディネーターとなり、勉強会を実施しています。戦略、マーケティング、人的資源など、それぞれの研究課題を持ち寄って、情報交換の場となっています。今年度からはディスカッションが活発になるよう、サロン形式で実施しています。例年、スペシャルイベントを開催したり、ホームカミングデーでは講演会を行ったりします。参加者は、医療関係職はもちろん、これからヘルスケア・ビジネスを始めようとしている方や、関心のある方、一から勉強したい方などで、誰でも参加できるオープンな場です。
 今年8月末には、「ベンチャーキャピタルの視点から-ヘルスケア・ビジネス、事業創出のトレンドと課題-」と題して講演会を開催します。ベンチャーキャピタルからスピーカーをお招きしますが、2名とも中大出身者です。

――CBSランナーズは、どういった活動ですか?

 CBSランナーズでは、毎年10月に文京区で開催される12時間リレーマラソンに参加しています。夕方6時から、翌朝6時まで、10名1組になり、1周1.3キロを駅伝方式で100周程度走り、たすきをつなぎます。1人トータル12~13km。中大理工学部の学生も参加していますよ。こちらはいつも上位入賞で、かなり速いです。
 朝3時くらいに走っていると疲れがたまってきて、「なぜ、こんな思いまでして走らなければならないのか」という気持ちになってきます。でも、CBSの仲間から、走りながら背中を押してくれて「がんばろう」と言われたら、「辛いのは私だけではないんだな」と力が沸きます。これって、勉強のときと同じですよね(笑)。走りながら白んでくる空を見ていると、何とも言えない気持ちよさで、終わった後の達成感とチームの団結力がすごく心地よい。だから苦しいけど、毎年参加してしまいます。CBSだけで60人、多いときは80人くらい参加しています。皆さん、なんでも限界に挑戦するのが好きなんですね(笑)。


 ▲ メディケアプロジェクトの講演会

――今後の展望を教えてください。

 博士課程を修了したら、やりたいことがいくつかあります。まずは自分の研究をまとめて書籍を出版したいです。患者満足の向上をはじめとした医療マネジメントについて、多くの医療関係者に知ってもらうためには、講演や講座だけでは限界がありますから。
 教育活動の部分では、医学部の学生に、早いうちから患者満足や医療経営を学んでもらいたい。だから、医学部での講座で話すチャンスがあればいいなと思っています。難しいですが。現在は、某大学病院の外科医を対象として、毎年講演の機会をいただいていますが、医師になる前に、病気についてだけではなく、患者のことをしっかり学んでほしい。そのためにも講座が担当できるようになりたいと思っています。
 特に私がテーマとしているのは診療所のマネジメントです。自分の研究について雑誌に投稿し、書籍等を出版することで、多くの医師に見ていただき、患者満足や医療経営について理解を深めてもらいたい。それが医療に広く役立つことを願っています。

――ありがとうございました。

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